in a silent way

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一つのアートが、人の考え、物の見方を「ひっくり返す」。
見たもの、聞いたものが、思いに染み渡り、いつか何かを変えてしまう。

この夏、友達と、彼女の子どもと、三人で旅をした。
瀬戸内国際芸術祭での作品「in a silent way」を観ることが旅の目的。
岡田利規×森山未來によるパフォーマンスプロジェクト。

彼女とは、20年来の付き合いになるのだが、一度も二人で旅をしたことはなかった。
また、彼女の子どもは、赤ちゃんの頃から知っているけれども、
ここ最近会うこともなく、私はどうやら忘れているようだった。
そんな三人が、旅に行くことに。

きっかけは、この年の春頃、メールでやり取りをしている時に、
「直島で、森山未來さんのパフォーマンスがあるね」
と二人で話したことだった。
小学校も夏休み期間だったので、子どもを連れて三人で行くことに。

作品の情報は、短い説明のみ。
どのようなパフォーマンスがされるのかという,具体的なものはなかったが、
ただただ、楽しみに瀬戸内の海をフェリーで渡った。

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作品は、芸術祭会場でもある、香川県直島・べネッセアートミュージアムにて公開される。
そこで、直島島内展示のアート「家プロジェクト」も鑑賞することに。島にある住居や建物を、アート作品として改装展示してあるので、歩きながらアート作品を楽しめる仕掛けだ。
いくつかの作品の中でも、ジェームズ・タレルの「南寺」は三人とも気に入った。
「もう一回見たい」と子どもが言うほど。
猛暑日であったので、アイスクリームを食べて休憩したり、
作品の「家」の中で暑さを避けたりしながら、アート観賞を楽しんだ。

ギャラリーでもあるシリンダー状の会場に入った時、パフォーマンスは既に始まっていた。
らせん状の通路が壁沿いあり、その2階近くの高さの場所に、
すっと森山未來さんが立っていた。
80名程の観覧者が見上げる中を、彼は静かにそこから降りてきて、語り出した。

熱心な説教者のように、一人一人と視線を合わせ、迫るように会場を動く彼。
吸い込まれるように、集中して見つめてしまう。
開演前に「どこで見ても構わない」と説明されていたが、むしろ迫ってくるパフォーマンスを、「避けながら」も、目が離せないというような状態。
詩のような、韻を踏んだ言葉が何節も語られる。
そして、語られた言葉自体も嘘か本当かわからない印象を残して、1時間ほどでさっとパフォーマンスが終わり、私たちも外へと出た。

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さて。あれは一体何だったのだろうと思い返す。
中央から遠い辺境の地で、何かをひっくり返すことについて、
たった一人で語られたアート。
「革命を起こす」ことが、あくまで静かに、忘れられない方法で、語られた。

旅の後、彼女から絵葉書が届いた。
「この共通の記憶、私たちに、きっと9歳の娘の中にも、刻まれていることでしょう。夏らしい旅でした」

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